東京高等裁判所 昭和54年(う)2320号 判決
被告人 羽澤重照 外八名
〔抄 録〕
右各所論のよって立つ論拠すなわち行為の社会的相当性の有無の判断は行為目的の正当性、状況の切迫性、手段の相当性等の諸要素の総合的評価の上に立ってなされなければならないという点はこれを是認するとしても、各所論がさらに進んで、いかなる場合においても右諸要素の全てに関する事実認定及び判断が不可欠であるとする点は、必ずしもその必要はないというべきであって、例えばその手段がいかにしても社会的に容認されないというような場合には、その一事によって当該行為の社会的相当性を否定することが許されると解すべきである。そしてこれを本件についてみると、原判決が認定した事実は、被告人ら約五〇名が平穏にデモ行進を開始した他の集団から離れ、デモ行進の当初から適法に警備配置についている警察官らの身体に集団で危害を加える目的のもとに旗竿、びん類等の兇器多数を携えて集合し移動し(原判示第一)、まずデモ隊列の誘導等にあたっていた制服警察官五名を旗竿で突き倒すなどしてその場を突破し、警備配置についていた機動隊警察官めがけて駆け足で突進し、これを制止しようとした機動隊員らに旗竿で突きかかり、あるいはびん類を投げつける等の攻撃を加え、右各警察官の適法な職務の執行を妨害するとともに、うち九名の警察官を負傷させた(同第二)というものであり(被告人らは前示代々木公園内道路の秩序を害したに過ぎないとの弁護人らの所論は採用できない。)、このような行為は、原判決が正当に説示するように法秩序を無視することの甚しい重大な行為というべきで、その目的等のいかんにかかわらず、社会的にはいかようにしても許容されるものでなく、それが社会的相当性を有しないことは明らかであるから、原判決がその認定にかかる被告人らの本件行為について違法性阻却に関する所論指摘の諸規定を適用しなかったのは相当であって、原判決に法令の適用解釈の誤りがあるとの各所論は採用するに由な<い。以下略>
(千葉 神田 中野)